みずからをしんぜよ
自からを信ぜよ

冒頭文

一 総て物が平等に見え出して来るといふことは、面白い人間の心理状態である。美も醜も、善も悪も、旨(うま)いも拙(まず)いも、昔感じたやうに大きな差別を見ずに、又は好悪を感ぜずに、あるがまゝにあるといふ風に感じて来る心理、この心理は差別をのみ気にし、又は箇(こ)をのみ気にした心理と、何(ど)ういふ関係を持つてゐるか。 人が大きな家屋に住んでゐる。立派な庭園を持つてゐる。綺羅(きら)を尽してゐる

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文章世界 第十二巻第六号」1917(大正6)年6月1日

底本

  • 定本 花袋全集 第二十四巻
  • 臨川書店
  • 1995(平成7)年4月10日