ふなじ
船路

冒頭文

大華表(おほとりゐ)の下には既に舟の支度で出来て、真中の四布蒲団(よのぶとん)の上に、芝居で使ふやうな小さな角な火鉢が置かれてあるのをかれは目にした。 それは最早夕暮に近かつた。向うの長い丘には、まだ夕日の影が微かにさし残つてはゐたけれども、冬の日脚の短かさ、それも忽ち消えてなくなつて了ふであらうと思はれた。かれは急いで船に飛び乗りながら、 『日のある中に、潮来までは行けるかね?』『さうです

文字遣い

新字旧仮名

初出

「太陽 第二十八巻第四号」1922(大正11)年4月1日

底本

  • 定本 花袋全集 第二十二巻
  • 臨川書店
  • 1995(平成7)年2月10日