きのこのかおり
茸の香

冒頭文

私は今(いま)上醍醐(かみだいご)の山坊で、非時(ひじ)の饗応(もてなし)をうけてゐる。 坊(ばう)は谿間(たにあひ)の崖に臨むで建てかけた新建(しんたち)で、崖の中程からによつきりと起(お)きあがつて、欄干(らんかん)の前でぱつと両手を拡(ひろ)げたやうな楓(かへで)の古木がある。こんもりとした其の枝を通して、段々(だら〳〵)下(お)りの谿底(たにそこ)に、蹲踞(しやが)むだやうな寺の

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆48 香
  • 作品社
  • 1986(昭和61)年10月25日