はなにさんかしょ
花二三ヶ所

冒頭文

一 花の咲きはじめるのを待つのも好いものだが、青葉になつてから、静かに上野の山あたりを歩くのもわるくない。桜の開落は少しあつけないが、その頃になると、椿だの、木瓜(ぼけ)だの、山吹だの、躑躅だの、段々に咲いて行くので、二十四番の春を一つ一つ楽しんで行くことが出来るやうな気がした。 『春雨にやつれしさまを見せじとや晴るればやがて花のちるらん』これは松波遊山翁の歌だが、花の盛にはいつでもそれを思ひ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「週刊朝日 第七巻第十六号」1925(大正14)年4月5日

底本

  • 定本 花袋全集 第二十四巻
  • 臨川書店
  • 1995(平成7)年4月10日