ときこ
時子

冒頭文

一 Bはやつとひとりになつた。時計を見ると、もう十時である。ホテルの室(へや)の中には、いろ〳〵なものが散(ちら)ばつて、かなりに明るい電気が卓(テーブル)の上に、椅子の上に、またその向うにある白いベツトの上に一杯にその光線を漲(みなぎ)らしてゐる。今まで間断(ひつきり)なしに客が出入(ではひり)して、低い声音(せいおん)だの、高い哄笑だの、面白さうな笑声(せうせい)などがその一室に巴渦(と

文字遣い

新字旧仮名

初出

「現代 第六巻第一号」実業之日本社、1925(大正14)年1月1日

底本

  • 定本 花袋全集 第二十一巻
  • 臨川書店
  • 1995(平成7)年1月10日