たにあいのあおいそら
谷合の碧い空

冒頭文

静かに金剛不壊といふことを思ふ。既に金剛不壊である。生死なく、暑寒なく、煩悩なしである。しかしそは生死なく暑寒なく煩悩なしを言ふことではない。又、生も可なり死も可なり暑寒煩悩も亦可なりと言ふことでもない。生の喜び、死の苦みは十分に受けることが必要である。また寒い暑いも人よりも一倍敏感に感じなければならない。唯考へなければならないことは、生死暑寒煩悩といふことは、実は、生命をめぐる方則(はうそく)で

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文章世界 第十二巻第八号」1917(大正6)年8月1日

底本

  • 定本 花袋全集 第二十四巻
  • 臨川書店
  • 1995(平成7)年4月10日