そんざい
存在

冒頭文

武林文子に対する批評の中では、広津和郎の言つたことに私は一番多く共鳴した。『だが、道徳性を離れて見た場合、この女性は男性に取つては魅力ある存在である』以下十行ほどはことに好い。流石は芸術家の見方だけあると思つた。 存在といふ方から人間を見ることは多い見方の中でも、ことにすぐれて徹底したものであるといふことを私はこれまでにも度々言つて来た。しかし、普通人にあつては、さうした心境に達することは容易

文字遣い

新字旧仮名

初出

「不同調 第二巻第四号」1926(大正15)年4月1日

底本

  • 定本 花袋全集 第二十三巻
  • 臨川書店
  • 1995(平成7)年3月10日