そうしゅん
早春

冒頭文

△ 風邪を惹いた床の中で『蜻蛉日記』を読む。学生時代にもよくひつくり返したものだが、今になつて読むと、いろいろなことがはつきりとわかつて面白い。何の事はない、それはその時分の心境小説だ。やれ源氏、やれ枕の草紙と言つて、普通はそれ以外に何もないやうに言つてゐるが、かういふ心境小説が、しかも時の大臣の思ひものの書いた心境小説が残つてゐるとはいかにしても不思議だ。私はそこからいろいろなものを捜し出した。

文字遣い

新字旧仮名

初出

「読売新聞 第一七二一四号」1925(大正14)年2月16日

底本

  • 定本 花袋全集 第二十四巻
  • 臨川書店
  • 1995(平成7)年4月10日