じゅもくとそらとぶとり
樹木と空飛ぶ鳥

冒頭文

この頃の庭は落葉で埋れて見る影もない。いかにも冬ざれといふ感じである。それに山の手は霜柱が深く立つて、塵埃(ごみ)が散ばつても、紙屑が風に吹き寄せられても、それを掃くことも出来ない。樹木もすべて死んだやうで、寒気の強い朝などには、厚ぼつたい常磐木の葉ですらわるく萎(しぼ)んだやうになつてゐる。熱帯地方にその故郷を持つた八つ手のやうな植物がことに目に立つてやつれきつてゐるのも無理はない。 庭の掃

文字遣い

新字旧仮名

初出

「新潮 第四十二巻第三号」1925(大正14)年3月1日

底本

  • 定本 花袋全集 第二十四巻
  • 臨川書店
  • 1995(平成7)年4月10日