みなげきゅうじょぎょう
身投げ救助業

冒頭文

ものの本によると、京都にも昔から自殺者はかなり多かった。 都はいつの時代でも田舎よりも生存競争が烈しい。生活に堪えきれぬ不幸が襲ってくると、思いきって死ぬ者が多かった。洛中洛外に激しい飢饉(ききん)などがあって、親兄弟に離れ、可愛い妻子を失うた者は世をはかなんで自殺した。除目(じもく)にもれた腹立ちまぎれや、義理に迫っての死や、恋のかなわぬ絶望からの死、数えてみれば際限がない。まして徳川

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 菊池寛 短篇と戯曲
  • 文芸春秋
  • 1988(昭和63)年3月25日