はつふゆのきじ
初冬の記事

冒頭文

また好きな初冬(はつふゆ)が来た。今年は雨が多いので、勤めに出かける人などは困つたらうと思ふ。しかしその雨の故(せい)か、今年の紅葉の色は非常に好い。私の庭のばかりでない、何処に行つても、濃やかな紅の色彩が何とも言はれない。梧桐(あおぎり)の葉などは、いつもならば、黒くしなびてカラ〳〵と一風に散つて了ふのであるが、今年はそれすら美しく黄ばんだ色を見せてゐる。 山茶花が厚い深い緑葉の中に隠見して

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文章世界 第十一巻第十二号」1916(大正5)年12月1日

底本

  • 定本 花袋全集 第二十四巻
  • 臨川書店
  • 1995(平成7)年4月10日