しょうせつへのふたつのみち
小説への二つの道

冒頭文

一 何うも、事実を書くと、兎角平凡になり勝である。なら想像で拵へ上げたものは何うかと言ふのに、これも本当でないので、矢張面白くない。兎角、その奥が見透かされさうになる。 苟も小説家である以上、自分の経験したものばかりを——つまり Ich-Roman ばかりを書いてゐるのでは、甚だ物足らない。何うかしてあらゆる種類の人物を紙上に活躍させたい。あらゆる世間の状態を書きたい。かう誰でも思ふに相違な

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文章世界 第十五巻第十号(秋季特別号)」1920(大正9)年10月1日

底本

  • 定本 花袋全集 第二十四巻
  • 臨川書店
  • 1995(平成7)年4月10日