さんがつのそうさく
三月の創作

冒頭文

今月は久し振で月評をする気になつた。成るたけ落ちついた静かな心持でやつて見たいと思ふ。 一番先きに読んだのは、「中央公論」に出てゐる藤村千代の『ある女の生活』であつた。私はこの人のものは余り沢山読んでゐなかつた。唯ひとつ淡墨色の何とかいふものを読んだだけだつた。その時も才能がある人だとも思はなかつたけれども、女としては思ひ切つたことを書く一人だと思つた。何だか腐つた溝のにほひでもかぐやうな気がし

文字遣い

新字旧仮名

初出

「報知新聞 第一六九〇九~第一六九一九号」1924(大正13)年3月3日~13日

底本

  • 定本 花袋全集 第二十四巻
  • 臨川書店
  • 1995(平成7)年4月10日