さるすべり |
| 百日紅 |
冒頭文
一 山の半腹を縫つた細い路を私は歩いて居た。日は照つて居た。下には、石材を三里先の山の中から運んで来るトロコのレールが長く続いてゐて、其向ふには、松の綺麗に生えた山が重り合つてゐた。 時々石を載せたトロコが、下りになつた路を凄じい音を立てゝ通つて行つた。……人足が両手を挙げたりなどした。 私は一緒に歩いてゐる丈の低い友に話し懸けた。 『何うだね? 君にはさういふ経験はないかね。』『ない
文字遣い
新字旧仮名
初出
「太陽 第十八巻第十四号」1912(大正元)年10月1日
底本
- 定本 花袋全集 第二十二巻
- 臨川書店
- 1995(平成7)年2月10日