さいかくしょうろん
西鶴小論

冒頭文

一 西鶴は大阪人ではあるけれども、それ以上に深い処を持つてゐると私は思ふ。西鶴が利己、打算、軽い遊び、さういふものゝ空気の中に一度は浸つた人であることは首肯かれる。又一方幇間(はうかん)らしい軽佻な気分の中にはしやぎ切つた人だとも思はれる。しかしそこに満足してゐることの出来る人ではなかつたことだけは確かである。渠(かれ)は世間一般の混雑した事実の上に一歩高く身を置いて、或は嗟(なげ)き、或は悲し

文字遣い

新字旧仮名

初出

「早稲田文学 第百四十号」1917(大正6)年7月1日

底本

  • 定本 花袋全集 第二十四巻
  • 臨川書店
  • 1995(平成7)年4月10日