こどくとほうしん |
| 孤独と法身 |
冒頭文
東京の夏は色彩が濃くつて好い。山や田舎と違つて、空気にもいろいろ複雑した色や感じがある。行かふ女達の浴衣の派手なのも好ければ、洋傘(パラソル)の思ひ切りぱつとしてゐるのも好い。朝蔭の凉しい中だけ勉強して、日影が庇に迫つて来る頃からは、盤礴(ばんぱく)して暮らす。夕方近くなるとカナカナやみんみんが鳴き出す。それをきゝながら、行水をザツと浴びて、庭樹の下などを漫歩(そぞろあるき)する。いかにも夏らしく
文字遣い
新字旧仮名
初出
「文章世界 第十二巻第九号」1917(大正6)年11月1日
底本
- 定本 花袋全集 第二十四巻
- 臨川書店
- 1995(平成7)年4月10日