くろねこ
黒猫

冒頭文

× 知識は堆積し且つ貯蔵して置くことが出来るが、芸術にはそれが出来ぬ。何故なら、芸術は飽くまでも刹那的で且つ醗酵的であらねばならないからである。         × 曾ては、かういふことを人も言ひ自分も言つた。四十、五十になつたら、ちつとは世の中のこともわかるだらう。少しはすぐれたものも書けるだらうと。想像は全く反対であつた。経験などは決して貯めて置くことの出来るものではなかつた。たとへ貯めて置

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文芸春秋 第二年第五号 六月特別付録号」1924(大正13)年6月1日

底本

  • 定本 花袋全集 第二十四巻
  • 臨川書店
  • 1995(平成7)年4月10日