としょかんげんそう
図書館幻想

冒頭文

おれはやっとのことで十階の床(ゆか)をふんで汗を拭った。 そこの天井は途方もなく高かった。全體その天井や壁が灰色の陰影だけで出來てゐるのか、つめたい漆喰で固めあげられてゐるのかわからなかった。 (さうだ。この巨きな室にダルゲが居るんだ。今度こそ會へるんだ。)とおれは考へて一寸胸のどこかが熱くなったか熔けたかのやうな氣がした。 高さ二丈ばかりの大きな扉が半分開いてゐた。おれはす

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 宮澤賢治全集第六卷
  • 筑摩書房
  • 1967(昭和42)年9月25日