うろこぐも
うろこ雲

冒頭文

そらいちめんに青白いうろこ雲が浮かび月はその一切れに入って鈍い虹を掲げる。 町の曲り角の屋敷にある木は脊高の梨の木で高くその柔らかな葉を動かしてゐるのだ。 雲のきれ間にせはしく青くまたたくやつはそれも何だかわからない。 今夜はほんたうにどうしたかな。八時頃からどこでもみんな戸を閉めて通りを一人も歩かない。 お城の下の麥を干したらしい空くひの列に沿って小さな犬

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 宮澤賢治全集第六卷
  • 筑摩書房
  • 1967(昭和42)年9月25日