こおりとごこう
氷と後光

冒頭文

「ええ。」 雪と月あかりの中を、汽車はいっしんに走ってゐました。 赤い天鵞絨の頭巾をかぶったちひさな子が、毛布につつまれて窓の下の飴色の壁に上手にたてかけられ、まるで寢床に居るやうに、足をこっちにのばしてすやすやと睡ってゐます。 窓のガラスはすきとほり、外はがらんとして青く明るく見えました。 「まだ八時間あるよ。」 「ええ。」 若いお父さんは、その青白い時計

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 宮澤賢治全集第六卷
  • 筑摩書房
  • 1967(昭和42)年9月25日