あるときに |
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冒頭文
物事がすべてはつきりときまつてゐないといふことが面白い。善いが善いでなく、わるいがわるいでなく、幸福が幸福でなく、不幸が不幸でないといふやうに、すべて、何んなことでも、有と無と、無と有とが背中合せになつてゐる。 世の中が混沌として捕捉することが出来ないやうに見え、人生が雑多紛々で、何れが本当で、何れがうそだかわからないやうに見え、また、人間の心の趨くところが、果して何うなつてゐるかわからないや
文字遣い
新字旧仮名
初出
「電気と文芸 第三号」電気文芸社、1920(大正9)年10月1日
底本
- 定本 花袋全集 第二十四巻
- 臨川書店
- 1995(平成7)年4月10日