あかいとりい
赤い鳥居

冒頭文

一 静夫はその高台のどんな細い道をもよく知つてゐた。そこを出れば坂がある。丘がある。林がある。その林は疎らで、下には萱(かや)や薄が生えてゐる。その薄の白い穂に夕日が銀のやうに光つて見えてゐる。さうかと思ふと、初夏の頃などには、浅い淡い緑がこんもりと丘を包んでそれが晴れた空に毬(まり)かなんぞのやうにくつきりと捺(お)されてゐるのが手に取るやうに眺められた。かれは何遍そこから川の方へと下りて行つ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「令女界 第四巻第五号」1925(大正14)年5月1日

底本

  • 定本 花袋全集 第二十二巻
  • 臨川書店
  • 1995(平成7)年2月10日