『ふとん』をかいたころ |
| 『蒲団』を書いた頃 |
冒頭文
一 『何うして、あんな「蒲団」のやうな作が歓迎されたでせうな?』かうある人が言つたが、作者自身でも、何うしてあんな作が今でも売れてゐるかと思はれるほどである。少くともあの作は四五万は売れた。 しかし、あの時分のことを思ひ出すのは愉快だ。あの時分のことを思ふと、国木田君の顔と一緒に渋谷のさびしい別荘のやうな家が浮び出して来る。小諸から『破戒』の未成稿を抱いて出京して来た島崎君のあの大久保の通りに面し
文字遣い
新字旧仮名
初出
「サンデー毎日 第三年第十六号」1924(大正13)年4月6日
底本
- 定本 花袋全集 第二十四巻
- 臨川書店
- 1995(平成7)年4月10日