きょうちくとうのいえのおんな
夾竹桃の家の女

冒頭文

午後。風がすつかり呼吸を停めた。 薄く空一面を蔽うた雲の下で、空気は水分に飽和して重く淀んでゐる。暑い。全く、どう逃れようもなく暑い。 蒸風呂にはひり過ぎた様なけだるさに、一歩一歩重い足を引摺るやうにして、私は歩いて行く。足が重いのは、一週間ばかり寝付いたデング熱がまだ治り切らないせゐでもある。疲れる。呼吸(いき)が詰まるやうだ。 眩暈を感じて足をとゞめる。道傍のウカル樹

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 花の名随筆8 八月の花
  • 作品社
  • 1999(平成11)年7月10日