あいどくしょのいんしょう
愛読書の印象

冒頭文

子供の時の愛読書は「西遊記」が第一である。これ等は今日でも僕の愛読書である。比喩談としてこれほどの傑作は、西洋には一つもないであらうと思ふ。名高いバンヤンの「天路歴程」なども到底この「西遊記」の敵ではない。それから「水滸伝」も愛読書の一つである。これも今以て愛読してゐる。一時は「水滸伝」の中の一百八人の豪傑の名前を悉く諳記(あんき)してゐたことがある。その時分でも押川春浪氏の冒険小説や何かよりもこ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文章倶楽部 第5年第8号」1920(大正9)年8月1日

底本

  • 芥川龍之介全集 第一巻
  • 岩波書店
  • 1996(平成8)年4月8日