つきのすみだがわ
月の隅田川

冒頭文

荒川堤へとて、川蒸氣に乘りて、隅田川を溯る。つれは福田瑞村なり。われ此の川蒸氣にて隅田川を上下せしこと幾回なるを知らざるが、今瑞村と共とするにつれて、十年の昔の漫ろに偲ばるるかな。 われに中村香峰といふ友ありき。その香峰は、瑞村と友なり。されど瑞村と余とは香峰を介して人物性行を傳聞せしのみにて、未だ相識らざりしなり。 香峰は好男子にして、多情多恨の才子なり。端艇の選手にて、常に墨陀

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 桂月全集 第一卷 美文韻文
  • 興文社内桂月全集刊行會
  • 1922(大正11)年5月28日