ゆうれい
幽霊

冒頭文

1 残暑がすぎ、凉風がさわやかに落葉をさそう頃になると、きまって思い出すことがある。 私はまだ紅顔の美少年(?)だった。その頃、私達一家は小石川の家から、赤坂の新居へ移った。 庭がとても広かった。麻布の一聯隊の高い丘が、苔むした庭の後にそびえ、雑草やくるみの木が、垂れさがるように見える空の上に生い茂っていた。また、丘の下のせいかじめじめとしていて、いちじくの葉が暗い蔭をと

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 猿々合戦
  • 要書房
  • 1953(昭和28)年9月15日