おさなきひ (あるふじんにあたうるてがみ) |
幼き日 (ある婦人に与ふる手紙) |
冒頭文
一 私の子供が初めて小學校へ通ふやうに成つた其翌日から、私は斯の手紙を書き始めます。昨日の朝、吾家では子供の爲に赤の御飯を祝ひました。輝く燈火の影に夜更しすることの多い都會の生活の中でも、子供ばかりは夜も早く寢、朝も早く起きますから、弟の方も兄と一緒に早く床を離れました。兄は八歳(やつつ)、弟は六歳(むつつ)に成ります。お人好しの兄に比べると弟はなか〳〵きかない氣で、玩具でも何でも同じ物が二
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「婦人畫報」1912(明治45)年5月~1913(大正2)年4月
底本
- 藤村全集第五卷
- 筑摩書房
- 1967(昭和42)年3月10日