ふうけい
風景

冒頭文

生活が一つのレールに乗って走り出すと、窓から見える風景がすべて遠い存在として感じられた。岸田は往復の省線の窓から、枯芝の傾斜面に残る雪や、ガラス板にたっぷり日光を受けて走る自動車や、あくどい広告燈の明滅を眺めて慣れた。そしてスチームは働いてゐると云ふ意識を温めた。つまり一定の職に就けたと云ふことは、それだけで岸田を安心させた。だから冬から春への推移だって、鳥屋の前で金糸鳥(かなりや)の和毛(にこげ

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 普及版 原民喜全集第一巻
  • 芳賀書店
  • 1966(昭和41)年2月15日