ばとうかんぜおん
馬頭観世音

冒頭文

東京から叔父が由三の家を訪ねて来たのは、今度叔父も愈々墓地を買ったのでそれの自慢のためだった。叔父は由三の灰白な貌と奇怪なアトリエを見較べながら、そこらに並んでゐるカンバスがすべてまっ白なのに驚いて、 「君は絵を描くと云ひながら、何も描ててはゐないぢゃないか、さう云ふ精神で出世が出来るか、それに君はこんな結構な静かな海辺に居りながら恐しく顔色がわるい、どうして毎日散歩して体のことを考へないの

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 普及版 原民喜全集第一巻
  • 芳賀書店
  • 1966(昭和41)年2月15日