ほのお

冒頭文

雪が溶けて、しぶきが虹になった。麦畑の麦が舌を出した。泥濘にぺちゃぺちゃ靴が鳴る。をかしい。また春がやって来る。一年目だ。今度こそしくじったら台なしだ。だけど三百六十五日て、やっぱし、ぐるりと廻るのだな。イエス・クリストよ。ヨルダンの河てどんな河なのかしら。 たった二三時間、二三枚の紙に書いた、書き方が下手くそだったので、一年間遅れるんだよ、僕は。それが負け惜しみと云ふものだ、と矢口が云

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 普及版 原民喜全集第一巻
  • 芳賀書店
  • 1966(昭和41)年2月15日