ふじのはな
藤の花

冒頭文

運動場の白い砂の上では四十人あまりの男女が体操をしてゐた。藤棚の下で見てゐると微風が睡気を運んで来るので、体操の時間は停まったままでちっとも動かない。機械体操から墜ちて手首を挫いた豊が、ネルの着物の上に袴を穿いて、手を綳帯で首から吊ってゐた。そのすぐ側には女の子が二人、やはり体操を休んでゐた。一人の女の子は髪が日向の枯草のやうに乾いてゐて、顔が年寄のやうに落着いてゐた。もう一人の女の子は何となく朝

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 普及版 原民喜全集第一巻
  • 芳賀書店
  • 1966(昭和41)年2月15日