ちちがうんだあかんぼう
父が生んだ赤ん坊

冒頭文

広子は父が出て行くと毎日一人でアパートの六畳で暮した。お昼頃父が拵へて置いてくれた弁当を食べると、絵本などを見てゐるが、そのうちに段々淋しくなって耳を澄ます。すると隣りの部屋には夜半によく夢をみて怒鳴る怕い小父さんがゐるらしいのだが、ことりとも物音を立てないので何をしてゐるのか気味が悪くなる。と、それが直ぐにむかふに通じたのか、突然隣りの小父さんはへらへらと小声で笑ふのだ。……広子は一そう心細くな

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 普及版 原民喜全集第一巻
  • 芳賀書店
  • 1966(昭和41)年2月15日