きのじゅうじか
木の十字架

冒頭文

「こちらで冬を過すのは、この土地のものではない私共には、なかなか難儀ですが、この御堂が本当に好きですので、こうして雪の深いなかに一人でそのお守りをしているのもなかなか愉しい気もちがいたします。……」 この雪に埋まった高原にある小さな教会の管理をしている、童顔の、律儀(りちぎ)そうなHさんはそんな事を私に言ったが、こういうごく普通の信者に過ぎないような人にとっても、こちらで他所者(よそもの)と

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 堀辰雄集 新潮日本文学16
  • 新潮社
  • 1969(昭和44)年11月12日