しょうねん
少年

冒頭文

空地へ幕が張られて、自動車の展覧会があった。誰でも勝手に這入れるので、藤一郎もいい気持で見て歩いた。ピカピカ光るお腹(なか)や、澄ました面(つら)した自動車を見ると、藤一郎の胸にはふんわりと訳のわからぬ感情が浮き上るのであった。いくら見惚れたって自分の所有にはならないのだが、ああ云ふ立派な自動車に乗って走れたら、どんなに素晴しいだらうか——藤一郎はその素晴しさを想像して一人でいい気持になった。美し

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 普及版 原民喜全集第一巻
  • 芳賀書店
  • 1966(昭和41)年2月15日