きょうふきょういく
恐怖教育

冒頭文

薇(ぜんまい)仕掛で畳の上を這ふ象の玩具はガリガリと厭な音を立てた。正三はわーと泣き出した。すると、兄姉達は面白がって一勢に笑った。母が叱ると、意地の悪い兄は薇を巻いたまま戸棚に収めた。象はガリガリ戸棚のなかで暴れた。(ガリガリガリと云ふ音は、その頃正三の齲(むしば)歯を切り取った厭な機械の音に似てゐた。) 兄が石から火が出ると云って、手斧で花崗石を叩きつけた。その瞬間、彼の膚を冷やりと

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 普及版 原民喜全集第一巻
  • 芳賀書店
  • 1966(昭和41)年2月15日