きせき
奇蹟

冒頭文

二年のB組の教室は、今しーんとして不思議な感激が満ちたまま、あっちでもこっちでも啜泣く声がきこえた。 「僕は泥水のやうに濁った腐敗分子でした。」と教壇の上で一人が釘づけになって、次を云はうとしてゐた。その時小使が頓馬な顔つきでドアを開けて、空(から)の薬鑵を持って帰らうとしかけたが、 「それは後にしてくれ給へ。」と主任教師が眴(めくばせ)すると、小使はけげんな顔つきで教室を名残惜しさうに素

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 普及版 原民喜全集第一巻
  • 芳賀書店
  • 1966(昭和41)年2月15日