ぼっきょ つむらのぶおに
卜居 津村信夫に

冒頭文

この家のすぐ裏がやや深い谿谷(けいこく)になっていて——この頃など夜の明け切らないうちから其処(そこ)で雉子(きじ)がけたたましく啼き立てるので、いつも私達はまだ眠いのに目を覚ましてしまう程だが、——それでも私はその谿谷が悪(にく)くなく、よく小さな焚木(たきぎ)を拾いがてらずんずん下の方まで降りていったりする。その谿谷の丁度向う側にある、緑色の屋根をした大きなヴィラが、いまはまだ木の枝を透いて手

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 堀辰雄集 新潮日本文学16
  • 新潮社
  • 1969(昭和44)年11月12日