うしをからかうおとこ
牛を調弄ふ男

冒頭文

その少女は馬鹿なのか善良なのか、とにかく調子はづれの女だった。それにその喫茶店の制度が、一々客のテーブルの側を巡回させて、「いらっしゃいませ、今日は誠に結構なお天気で御座います。」と御機嫌伺ひをやらせるのだから少し変ってゐた。誰だってこんな所へ本気で来る筈はないと安永は思った。その彼だっていい齢をして何が面白くてこんな場所に来るのか解らなかった。が、三日その少女を見ないと何だか物足らないし気になる

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 普及版 原民喜全集第一巻
  • 芳賀書店
  • 1966(昭和41)年2月15日