あいびき
あいびき

冒頭文

……一つの小径(こみち)が生い茂った花と草とに掩(おお)われて殆ど消えそうになっていたが、それでもどうやら僅かにその跡らしいものだけを残して、曲りながらその空家へと人を導くのである。もう人が住まなくなってから余程になるのかも知れぬ。それまで西洋人の住まっていたらしいことは、そのささやかな御影石(みかげいし)の間に嵌(は)めこまれた標札にかすかに A. ERSKINE と横文字の読めるのでも知られる

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 堀辰雄集 新潮日本文学16
  • 新潮社
  • 1969(昭和44)年11月12日