くじのばいりん
久地の梅林

冒頭文

あはれや、庭の梅三四本、何も肥料をやらざれど、春くれば、花を著く。鶯も來り鳴く。裸男、窓の内にて、之を聽いて、獨り樂しみ居りしに、『今日は』とて、十口坊來たる。午食を共にして、一二時間雜談に過ごしけるが、十口坊曰く、『梅の時候になりぬ。何處かへお伴申さむ。さるにても梅は何處が好きか。教へ給へ』といふに、裸男得意になり、『花といへば櫻、花見といへば、櫻を見にゆくことをいふ。梅も、花は花なれども、梅を

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 桂月全集 第二卷 紀行一
  • 興文社内桂月全集刊行會
  • 1922(大正11)年7月9日