はえをにくむき
蠅を憎む記

冒頭文

上 いたづら為(し)たるものは金坊(きんぼう)である。初めは稗蒔(ひえまき)の稗(ひえ)の、月代(さかやき)のやうに素直に細(こまか)く伸びた葉尖(はさき)を、フツ〳〵と吹いたり、﨟(ろう)たけた顔を斜めにして、金魚鉢(きんぎょばち)の金魚の目を、左から、又右の方から視(なが)めたり。 やがて出窓の管簾(くだすだれ)を半(なか)ば捲(ま)いた下で、腹(はら)ンばひに成つたが、午飯(

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文芸界」1901(明治34)年6月

底本

  • 日本幻想文学集成1 泉鏡花
  • 国書刊行会
  • 1991(平成3)年3月25日