こうらん
光籃

冒頭文

田舎(いなか)の娘であらう。縞柄(しまがら)も分らない筒袖(つつっぽ)の古浴衣(ふるゆかた)に、煮染(にし)めたやうな手拭(てぬぐい)を頬被(ほおかぶ)りして、水の中に立つたのは。……それを其(そ)のまゝに見えるけれど、如何(いか)に奇を好めばと云つても、女の形に案山子(かかし)を拵(こしら)へるものはない。 盂蘭盆(うらぼん)すぎの良(い)い月であつた。風はないが、白露(しらつゆ)の蘆

文字遣い

新字旧仮名

初出

「苦楽」1924(大正13)年5月

底本

  • 日本幻想文学集成1 泉鏡花
  • 国書刊行会
  • 1991(平成3)年3月25日