きのえきのと
甲乙

冒頭文

一 先刻(さっき)は、小さな女中の案内で、雨の晴間を宿の畑へ、家内と葱を抜きに行った。……料理番に頼んで、晩にはこれで味噌汁を拵(こしら)えて貰うつもりである。生玉子を割って、且(か)つは吸ものにし、且つはおじやと言う、上等のライスカレエを手鍋で拵(あつら)える。……腹ぐあいの悪い時だし、秋雨もこう毎日降続(ふりつづ)いて、そぞろ寒い晩にはこれが何より甘味(うま)い。 畑の次手(ついで)に、

文字遣い

新字新仮名

初出

「女性」1925(大正14)年1月号

底本

  • 文豪怪談傑作選 泉鏡花集 黒壁
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 2006(平成18)年10月10日