おさないころのきおく
幼い頃の記憶

冒頭文

人から受けた印象と云うことに就(つ)いて先(ま)ず思い出すのは、幼い時分の軟らかな目に刻み付けられた様々な人々である。 年を取ってからはそれが少い。あってもそれは少年時代の憧(あこが)れ易い目に、些(ちょ)っと見た何の関係もない姿が永久その記憶から離れないと云うような、単純なものではなく、忘れ得ない人々となるまでに、いろいろ複雑した動機なり、原因なりがある。 この点から見ると、私は少年時代

文字遣い

新字新仮名

初出

「新文壇 第7巻第2号」1912(明治45)年4月

底本

  • 文豪怪談傑作選 泉鏡花集 黒壁
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 2006(平成18)年10月10日