けいよのおじ
刑余の叔父

冒頭文

一 一年三百六十五日、投網打(とあみうち)の帰途(かへり)に岩鼻の崖から川中へ転げ落ちて、したたか腰骨を痛めて三日寝た、その三日だけは、流石に、盃を手にしなかつたさうなと不審がられた程の大酒呑、酒の次には博奕(ばくち)が所好(すき)で、血醒(ちなまぐさ)い噂に其名の出ぬ事はない。何日(いつ)誰が言つたともなく、高田源作は村一番の乱暴者と指されてゐた。それが、私の唯(たつた)一人の叔父。

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 石川啄木全集 第三巻 小説
  • 筑摩書房
  • 1978(昭和53)年10月25日