ほくそうのじゅうろくとう
北総の十六島

冒頭文

利根川の下流、霞ヶ浦の末と相會する處、十六島は今ひとつに成りたれども、水路縱横、烟霞縹渺、白帆相望み、漁歌相答へ、名たゝる三社、屹として水湄に鼎立す。三社とは、香取祠、鹿島祠、息栖祠、是れ也。 高天原より下りて、一劍天下を風靡し、餘威を常總のはてまでも及ぼし給ひたる二大偉人の、武甕槌命は鹿島に鎭し、經津主命は香取に鎭せらる、げに尊くも又なつかしき神靈の地なる哉。 明治三十四年の春の

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 桂月全集 第二卷 紀行一
  • 興文社内桂月全集刊行會
  • 1922(大正11)年7月9日