せんかわのさくら
千川の桜

冒頭文

小金井の山櫻の區域盡きて、境橋架れる處より、玉川上水分派し、練馬驛、東長崎驛を經て、板橋に入る。これを千川上水と稱す。大正四年、この上水べりに櫻と楓との若木を植ゑ付けたりと聞く。さても花の名所の増加すること哉。 大正五年四月十日、風強し。花の都變じて塵の都となる。庭の樹空に舞ひ、障子がた〳〵動きて止まず。裸男生來風が大嫌ひ也。このやうに風の吹く日は、頭をかきむしらるゝ心地して、筆とること能は

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 桂月全集 第二卷 紀行一
  • 興文社内桂月全集刊行會
  • 1922(大正11)年7月9日