しんむさしののさくら |
| 新武蔵野の桜 |
冒頭文
相手は變れど、主は變らず。昨、夜光命の手にせし四合入の瓢箪、今日は十口坊の手に在り。裸男は例の三合入の瓢箪を手にして、新宿の追分より、京王電車に乘る。線路をはじめは甲州街道に沿ひしが、やがて舊玉川上水に沿ふ。沿ふより間もなく、天神橋の手前の右に近く可なり大なる銀杏あり。凡そ二抱へもあらむと思はるゝ一本の幹の、二三丈上よりは、數十百條となりて直立す。裸男、十口坊を顧みて、『あれ見よ、一種無類の銀杏に
文字遣い
旧字旧仮名
初出
底本
- 桂月全集 第二卷 紀行一
- 興文社内桂月全集刊行會
- 1922(大正11)年7月9日