シベリヤのさんとうれっしゃ
シベリヤの三等列車

冒頭文

1信 満洲の長春へ着いたのが十一月十二日の夜でした。口から吐く息が白く見えるだけで、雪はまだ降つてゐません。——去年、手ぶらで来ました時と違つて、トランクが四ツもありましたし、駅の中は兵隊の波で、全く赤帽を呼ぶどころの騒ぎではないのです。ギラギラした剣附鉄砲の林立してゐる、日本兵の間を潜つて、やつと薄暗い待合所の中へはいりました。此待合所には、売店や両替所や、お茶を呑むところがあります。

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆 別巻51 異国
  • 作品社
  • 1995(平成7)年5月25日